2008年1月11日 (金)

おかしな天声人語

 杉並の区立中学校で大手進学塾の講師を招いて夜間授業をするかしないかでもめているらしい。ニュースはともかく、1/9付天声人語でこのことを取り上げていた。
 正規料金の半額ほどで塾の指導を受けられるとか、「できる子を伸ばす」取り組みとか書いている。この人は、塾での「教育」をどのように捉えているのだろうか。
 そもそも塾とか予備校というのは、進学か補習のいずれかを目的としている。ここに登場する「大手進学塾」は進学を目的とする塾である。そこでは何をするのか。言わずと知れた「受験テクニックの鍛錬」である。
 最近の入試は結構難しくなってきた。練習とか鍛錬とかで対応しにくい、「考えさせる問題」や「普段から考えていないと答えにくい問題」を出す傾向が増えてきた。そういう問題に対処できるためには、大手進学塾では「考える力」を身に付ける教育が進みつつあるのかもしれない。私もかつて某進学塾で契約社員として講師をしていた経験を持つが、その時の状況は滑稽だった。地元の中学校の教員は公立高校に合格するためのテクニックだけを生徒に習得させようとしていた。少なくとも生徒たちが学校で「勉強した」ことを報告すると、そうとしか捉えようがなかった。物事の原理や法則、意義や考え方をちっとも教えてもらえない様子だったので、私はそういった根元的な説明をする授業をする羽目になった。塾と学校が完全に入れ替わった状態であった。しかし大手進学塾のそもそもの目標は進学そのものにある。
 杉並の区立中とこの天声人語の筆者はいったい何をしたいのだろうか。受験に秀でる子を作るのが目的なのか、民間出身の校長は進学の「成果」を上げれば評価されるのか。別に夜間塾ならもっと「総合学習」的なものでいいのではないか。本来学校で行う「教育」とは点数だけが目的ではないはずである。何のための義務教育基礎学習なのか。テストで競い合うための勉強ではなく、世の中を知るための学習ができないのであろうか。
 この「夜間塾」の導入が費用の高い私立校や大手塾に行けないこどもへの「福音だ」とまで曰う。金持ちが金をかけて受験テクニックを身に付け人気が高くて偏差値の高いブランド高(大)に入るのが理想か。格差社会の勝ち組をめざす唯一の道か。この考え方には旧世代の競争も、ネオコンの理想社会も、どちらの雰囲気も感じさせる。こういう大人に囲まれて、こどもたちの心の中から「もともと特別なオンリーワン」という大切な気持ちは消えていくのに違いない。
 これが「官民の力を合わせた試行錯誤」か。笑わせる。

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